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ショーケース

ショーケース

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2025-06-04

梨子地草花蒔絵重硯箱

幅14.8×奥行21.4×高さ16.2cm

蒔絵とは字の通り「蒔いて絵にする」という意で、漆を使った研出蒔絵、平蒔絵、高蒔絵が基本的な技法としてあり、時代を経るに従って螺鈿、平文、沈金などの技法が組み合わさり漆の装飾表現として発展してきました。高価な材料と長い制作期間を要する蒔絵は、一点ものの貴族の調度品への加飾を始まりとし、次第に茶道具や、武士・町人の装身具へと展開されていきました。

長方形の被せ蓋造り、総体を梨子地とした五段重ねの硯箱です。蓋表と四つの側面はそれぞれ独立した画面となっており、牡丹、撫子、女郎花、芙蓉、菊など、夏から秋にかけての草花が高蒔絵を中心に豊かに描かれています。細やかに描写された表の意匠に対し、内部は中央に桐七宝形の銀製水滴と硯がシンプルに嵌められ実用的な雰囲気も少し感じられます。この硯箱を書院に飾ると、「歌会」や「聞香」などといった貴族の遊びを連想させ、格調高い茶席になることでしょう。