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ショーケース

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2023-11-08

了入 黒茶碗「晩鐘」

直径11.8×高さ8.6cm

楽茶碗は桃山時代、天正年間の京都で、初代長次郎から始まりました。千利休による侘び茶の完成時期に、手捏ねによる成形でもって、彼の求めた禅的な理念を一碗の中に込めたものと言えます。その後も茶の湯と密接につながり、450年に渡ってさまざまな楽茶碗が代々作られてきました。
九代了入は15歳で九代吉左衞門を襲名、56歳で剃髪し「了入」と号しました。作陶生活は65年にも及び、その作風は時代によって異なり変化に富んでいます。
本茶碗は自由に作陶を行った晩年に作られたもので、全体は薄作り、腰から底はずんぐりと丸くちょうどよく手に収まります。黒釉が薄く全体に掛かる中、うっすらと地肌が見える「掛け外し」も一部あり、指で付けられた斜めの筋跡とともに胴の景色となっています。高台がかなり小振りでくっきりとしているのも特徴的で、はっきりと白い土が見える高台内には 隠居後の草楽印いわゆる「隠居判」が捺されます。
内箱に吸江斎による銘「晩鐘」があり、おそらく「瀟湘八景」あるいは「近江八景」に因んで、八碗作られたものの一碗と思われます。外箱には而妙斎による追銘「福槌」とあり、お正月を迎えるこれからに相応しい一碗です。