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ショーケース

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2021-02-04

新兵衛茶入「山吹」

胴径5.6 高7.3 cm

新兵衛は瀬戸窯分の後窯に分類され、京都三条通りで糸割符業を営み、小堀遠州に茶道を学んだ有来(浦井とも)新兵衛による作陶とも注文品とも云われています。この茶入はやや小振りなサイズ感ながら、茶入正面のまるで水しぶきをまき散らしながら落下する大滝のように流れ垂る黄釉が茶入の存在感を一段と大きく魅せています。優しい印象の丸みを帯びた肩衝で、鈍い光沢を放つ柿釉にどっぷりと包まれたその胴には器胎を歪ませるために押し込んだ指の跡がくっきりと残り、中央に一筋の胴紐をぐるりと巡らせその歪めた全体をぐっと引き締めています。裾から畳付きにかけては土見せとなっており、胴体の割に小さなその畳付きには糸切の跡を見ることが出来ます。ザラっとして柔らかなその手擦れた土肌からは経てきた歳月を感じずにはいられません。仕覆は紹智金襴、角倉金襴坂田屋金襴片身替り、縞宝尽し文緞子、吉野間道類裂の4つが添っています。印象的な正面の黄釉の釉景色から、遠州流13世小堀宗実家元が『拾遺和歌集』の源順の「春深み井出の河浪立ち返り 見てこそ行かめ山吹の花」という和歌と共に銘「山吹」と付けています。春も深まった爽やかな時節に是非とも使いたい逸品です。